石田衣良著 文藝春秋
池袋ウェストゲートパーク 10冊目
シリーズものは癖になる。新作が出ると、つい読んでしまう。この安心感がたまらない。とは言え、毎回、話題になったテーマを取り上げたり、さまざまなくふうがあって、飽きさせない。今回もホームレスの生活保護費を搾取する弁護士とか現代を象徴する事件が取り上げられている。
以前、テレビドラマになった記憶がある。そのドラマは見ていないので見当違いかもしれないが、何となくヒップホップ系の若者たちが活躍するアクション系の印象があった。そのころ、それにちかい若者たちが苦手で、敬遠気味の作品だった。
というわけで、「非正規レジスタンス」の頃から、流行に遅ればせながら読み始めてみると、イメージが違う。
裏社会のGボーイズ(古いけれど・・渋谷のチーマーと違う?)を頼りにする傾向があるが、語り手の「マコト」は頭の切れる苦情処理屋。そのうえ実家の果物屋の社員でありミニコミ誌に連載を持つフリーライターでもある。彼のボヤキから始まる池袋の現在に引き込まれてしまう。このあたりの感覚は私立探偵が登場するアメリカのミステリーに似ていて、ローカル情報・・Y電気日本総本店のオープンとか・・がなければ、ニューヨークやロスやサンフランシスコでもいいと思うくらい・・
マコトの人間性に魅力を感じつつ、彼が傷つかないことを願いつつ、11冊目を待っている。
2010年12月28日火曜日
2010年12月25日土曜日
グッドラックららばい この非常識な・・
「グッドラックららばい」平安寿子著 講談社文庫
ある日、母が家出する。「ちょっと家出します。そのうち帰ります」と夫の職場に電話して、20年帰らない。夫は非常事態に対応するのが面倒なので(対応したくない。考えたくない。)「様子を見る」ことにする。二人の娘のうち姉の積子は恋人に夢中なので気にかけていない。妹の立子(中学生)だけは見捨てられたことに怒りを感じて感情を爆発させる。そして20年の家族の歴史が語られる。
平凡な人たちの非現実的な対応。かろうじて妹だけが、現実に対応しているように見える。
それにしても、この爽快感は何だろう。世間体とか、常識とか考えずに、本音で生きながら平穏な生活を送れることに、うらやましいような、あきれるような気分。
核家族だから昔のようではないが、まだまだ世間は狭い。
ある日、母が家出する。「ちょっと家出します。そのうち帰ります」と夫の職場に電話して、20年帰らない。夫は非常事態に対応するのが面倒なので(対応したくない。考えたくない。)「様子を見る」ことにする。二人の娘のうち姉の積子は恋人に夢中なので気にかけていない。妹の立子(中学生)だけは見捨てられたことに怒りを感じて感情を爆発させる。そして20年の家族の歴史が語られる。
平凡な人たちの非現実的な対応。かろうじて妹だけが、現実に対応しているように見える。
それにしても、この爽快感は何だろう。世間体とか、常識とか考えずに、本音で生きながら平穏な生活を送れることに、うらやましいような、あきれるような気分。
核家族だから昔のようではないが、まだまだ世間は狭い。
2010年12月23日木曜日
「和菓子のアン」は修行中
「和菓子のアン」 坂木司著 光文社
梅本杏子18歳。食べることが大好きなぽっちゃりタイプの女の子。そのちょっと太めの容姿コンプレックスのせいか、少々自己評価が低いタイプ。性格は穏健、争いを好まないというか、避けて通るタイプ。就職活動をしないまま高校卒業、デパ地下の和菓子店でアルバイトを始める。「アンコ」と呼ばれることになる。ちょっと太めのかわいい「赤毛のアン」物語。読みながらタレントの柳原可奈子さんの顔を思い浮かべていた。
アルバイトだからしょうがないと、お客様に思われまいと、必死に商品説明を覚える杏子さん。この子は頭の回転は早い。やり手の店長、先輩バイトは美人の女子大生、イケメン社員にかこまれて、殺人なきデパ地下のミステリーを解くことになる。
テーマが和菓子なので、表紙のように、とてもおいしそうで、楽しい作品。
アルバイト・派遣・出店の社員・デパートの社員・・いろいろな雇用形態の人たちが働くデパートを舞台にしているので、別の方向性もあるけれど、これはこれ。
現実的な舞台と設定なので、あえて書いてしまうと、「杏子さん」は実家で暮らすお嬢さんだから、アルバイトで良いのでしょうが・・(しっかりものだから、ちゃんと正社員になったり、お店を開いたりしそうだけれど)・・ちょっと心配な今後でもある。ギルバート役はああだし・・
梅本杏子18歳。食べることが大好きなぽっちゃりタイプの女の子。そのちょっと太めの容姿コンプレックスのせいか、少々自己評価が低いタイプ。性格は穏健、争いを好まないというか、避けて通るタイプ。就職活動をしないまま高校卒業、デパ地下の和菓子店でアルバイトを始める。「アンコ」と呼ばれることになる。ちょっと太めのかわいい「赤毛のアン」物語。読みながらタレントの柳原可奈子さんの顔を思い浮かべていた。
アルバイトだからしょうがないと、お客様に思われまいと、必死に商品説明を覚える杏子さん。この子は頭の回転は早い。やり手の店長、先輩バイトは美人の女子大生、イケメン社員にかこまれて、殺人なきデパ地下のミステリーを解くことになる。
テーマが和菓子なので、表紙のように、とてもおいしそうで、楽しい作品。
アルバイト・派遣・出店の社員・デパートの社員・・いろいろな雇用形態の人たちが働くデパートを舞台にしているので、別の方向性もあるけれど、これはこれ。
現実的な舞台と設定なので、あえて書いてしまうと、「杏子さん」は実家で暮らすお嬢さんだから、アルバイトで良いのでしょうが・・(しっかりものだから、ちゃんと正社員になったり、お店を開いたりしそうだけれど)・・ちょっと心配な今後でもある。ギルバート役はああだし・・
2010年12月19日日曜日
木暮荘物語 三浦しをん著 祥伝社
小田急線世田谷代田駅から徒歩5分、ボロアパートの住人たちのお話。(とっても良い場所だと思う)
音信不通の元恋人が突然現れて、現恋人と鉢合わせという事態に・・
数時間後には3人でご飯を食べている・・
という展開で、木暮荘の住人の話が綴られている。ユーモアたっぷりのスピーディな文章で、あっという間に読んでしまって、勿体ないことをした。
登場人物は普通の人のはずなのに、ちょっと変わっている人ばかり・・のような・・
とぼけたおかしみのある話の次は、凄味のきいた人物が、登場したりして、たっぷり楽しませてくれる。
最初の妙な三角関係のおかしみと、今どきの女子大生と思ったら・・の話が心に残った。
音信不通の元恋人が突然現れて、現恋人と鉢合わせという事態に・・
数時間後には3人でご飯を食べている・・
という展開で、木暮荘の住人の話が綴られている。ユーモアたっぷりのスピーディな文章で、あっという間に読んでしまって、勿体ないことをした。
登場人物は普通の人のはずなのに、ちょっと変わっている人ばかり・・のような・・
とぼけたおかしみのある話の次は、凄味のきいた人物が、登場したりして、たっぷり楽しませてくれる。
最初の妙な三角関係のおかしみと、今どきの女子大生と思ったら・・の話が心に残った。
2010年12月18日土曜日
「優しい大人」はめったにいない
「優しいおとな」 桐野夏生著 中央公論新社刊
「優しい大人はめったにいない。優しくない大人からはすぐにげろ。優しいか、優しくないか、どっちつかずか。でも、一番僕たちを苦しめるのは、どっちつかずのやつらだ。しかも、そいつらは数が多い。」
近未来の渋谷でホームレス暮らしの少年イオンの物語。児セン(児童養護施設のようなもの)から逃げ出して数年たち現在15歳。貧しい食事のせいで、体は小さい。食べるのは厳しいが、児センには絶対戻りたくない。字は読めないが、知恵を絞って一人で生き抜いてきた。
そして、イオンには、もっと過酷な事件が起きる。
桐野夏生さんの作品は現実の事件を思い起こさせるものが多い。この作品も、派遣切り・非正規雇用・若者のホームレス・児童虐待というような昨今の社会の負の部分を映している。フィクションではあるが近未来ともいえない。
しかし、悲惨な話ではあるが魂の救済があり、少年の冒険物語でもあるので、心に沁みることはあっても理不尽な怒りを覚えたり、社会正義云々は思わない。現実の社会問題を扱っているように見せかけるからくりを、読者は楽しめるのだと思う。
新聞連載ということで、表紙・扉・中扉のイラストが美しい。深刻なテーマなのに印象が明るい(白っぽい明るさ)なのはイラストのせいかもしれない。
「優しいおとな」のことば、ドキッとする。どっちつかず・・・自分を振り返ってみると・・どっちつかずが一番安全だったと思う。
「優しい大人はめったにいない。優しくない大人からはすぐにげろ。優しいか、優しくないか、どっちつかずか。でも、一番僕たちを苦しめるのは、どっちつかずのやつらだ。しかも、そいつらは数が多い。」
近未来の渋谷でホームレス暮らしの少年イオンの物語。児セン(児童養護施設のようなもの)から逃げ出して数年たち現在15歳。貧しい食事のせいで、体は小さい。食べるのは厳しいが、児センには絶対戻りたくない。字は読めないが、知恵を絞って一人で生き抜いてきた。
そして、イオンには、もっと過酷な事件が起きる。
桐野夏生さんの作品は現実の事件を思い起こさせるものが多い。この作品も、派遣切り・非正規雇用・若者のホームレス・児童虐待というような昨今の社会の負の部分を映している。フィクションではあるが近未来ともいえない。
しかし、悲惨な話ではあるが魂の救済があり、少年の冒険物語でもあるので、心に沁みることはあっても理不尽な怒りを覚えたり、社会正義云々は思わない。現実の社会問題を扱っているように見せかけるからくりを、読者は楽しめるのだと思う。
新聞連載ということで、表紙・扉・中扉のイラストが美しい。深刻なテーマなのに印象が明るい(白っぽい明るさ)なのはイラストのせいかもしれない。
「優しいおとな」のことば、ドキッとする。どっちつかず・・・自分を振り返ってみると・・どっちつかずが一番安全だったと思う。
2010年12月9日木曜日
ファージング
「英雄たちの朝」「暗殺のハムレット」「バッキンガムの光芒」の三部作。ジョー・ウォルトン作 茂木健訳 創元推理文庫
ルドルフ・ヘスがイギリスとの講和交渉に成功して、ヒットラー政権が存続している第二次大戦後の世界。もし、そうだったら・・・・という魅力的なパラレルワールドの物語。
第一部はユダヤ人ビジネスマンと結婚した貴族の令嬢の物語。第二部はヒットラー暗殺計画に巻き込まれてく女優の事件。第三部は社交界デビュー直前の少女の冒険。
第二次世界大戦後の世界を描く大河小説といえるが、何しろ歴史改変小説。世の中の動きは戦争前とあまり変わっていない。大陸のユダヤ人収容所は増え続け、イギリスもファシズム化していく。
イギリス貴族社会を中心に、権力の前に踏みにじられる正義を、かろうじて維持しようとする人々の無念と努力を描いている。エンタテイメントなので、最後は・・・希望を持てます。ちょっと安易な解決法のような気もするけれど・・イギリス人だからしょうがない。
原題のほうが洒落ていて面白いけれど、意味不明なので、こうなったのでしょうね。
ルドルフ・ヘスがイギリスとの講和交渉に成功して、ヒットラー政権が存続している第二次大戦後の世界。もし、そうだったら・・・・という魅力的なパラレルワールドの物語。
第一部はユダヤ人ビジネスマンと結婚した貴族の令嬢の物語。第二部はヒットラー暗殺計画に巻き込まれてく女優の事件。第三部は社交界デビュー直前の少女の冒険。
第二次世界大戦後の世界を描く大河小説といえるが、何しろ歴史改変小説。世の中の動きは戦争前とあまり変わっていない。大陸のユダヤ人収容所は増え続け、イギリスもファシズム化していく。
イギリス貴族社会を中心に、権力の前に踏みにじられる正義を、かろうじて維持しようとする人々の無念と努力を描いている。エンタテイメントなので、最後は・・・希望を持てます。ちょっと安易な解決法のような気もするけれど・・イギリス人だからしょうがない。
原題のほうが洒落ていて面白いけれど、意味不明なので、こうなったのでしょうね。
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